長い長い夢を見た。
甘くとろけそうな世界。視界の隅には彼がいた。
今は今だけはとかき消したのだけど、運転席に乗る彼の横顔とか、彼の車の香りを強烈に思い出す。
「いつか忘れるよ。」
そんなことを自分に言い聞かせたりはするのだけど、どうもうまくいかない。
「会いたい。」
声にならない声を心の中でつぶやいた。
また激しく切なくなり、正直泣いた。
泣き疲れて泣いた夜が何度あっただろう。
こんなに近くにいるのに会えない彼を何度思っただろう。
「…好き。」
すこしだけ声にしてみる。振り絞った自分の声がこだまのようになって、もっと切なくなる。
2人で肩を並べて歩いてた日を思い出してみた。
2人で手を並べて写真を撮ったりもしたっけ。
あぁ、今は私の手のひらひとりだなぁ。
そうして、長い夢だけが終えたけれど、夜が明けたら寂しさが残ってしまった。